コンプレックスを感じている方にお勧め、西加奈子の本

読書・映画

 かつて私もコンプレックスを抱えていました。10代~20代では知識や考え方の幅も限られ、自分ではどうすることもでず、悩みを抱えてしまうのだと思います。年齢を重ねる毎に、解決策の知識や経験を重ね、徐々にコンプレックスから解放されました。

 コンプレックスから解放された経験を実感した40代に差し掛かる頃に出会った本が、西加奈子さんです。著者の主人公は、何かとコンプレックスを抱える人が多く、何冊か読むにつれ「20歳の頃に出会いたかった」と思うようになりました。

 以下に、西加奈子氏のおすすめ3冊をご紹介します。(多少のネタバレはご了承下さい。)

・サラバ (家族に対するコンプレック)
・i(アイ) (自分の生い立ちに対するコンプレックス)
・漁港の肉子ちゃん (コンプレックスから解放された生き様)

「サラバ」

 文庫本で3冊にもなる長編です。主人公は、変わった性格の姉を持つ男の子です。彼は、常に風変わりな姉のせいで様々な恥ずかしい思いをし、そんな姉弟であることをコンプレックスに思っています。成長すると姉は引きこもり、その思いは更に強くなります。その一方、彼はどんどんイケメンになって行きます。しかし、あることをきっかけに事態は大きく動いていくのです。

 私も家族に対する強いコンプレックを持っていましたので、この気持ちはよく分かりました。そして、そんな私のコンプレックスの正体は…、「サラバ」にそのヒントが隠されているような気がします。家族で悩んでいる方、自分に素直に生きるということは?など、思春期に誰もが一度は考える哲学的な悩み対する示唆に富んだ名作と思います。


サラバ! (上) (中) (下)巻セット

「i(アイ)」

 主人公は、アメリカ人の父と日本人の母に育てられた、パレスチナ人の養子の女の子です。素敵な両親に育てられ、幸せのはずの主人公。しかし、彼女はその境遇に「なぜ自分だけがこんな良い思いをしているのか」など、自分を責めてしまいます。

 ジコチューの私からは、なかなか想像できない悩みです。そんな彼女ですから友人もできずに居たのですが、日本に移住することになり、初めて親友と呼べる友達を得ます。その後、彼女は学業優秀で大学院にまで進み、ついには恋人を得ることが出来ます。一方、親友の彼女はアメリカに行って生き生きとしています。そして、訪れる出来事…、そして彼女は解放され、ついに自分を肯定できるのです。そして、それは相手をも肯定することなのです。


i(アイ)

「漁港の肉子ちゃん」

 漁港で働く肉子ちゃんは、若い頃、ダメ男に相当な目に遭ったらしい。そして港町に流れ着いたのだそうです。しかし彼女は、今日も元気に楽しそうに娘と生きています。肉子ちゃんは、不細工だし、太っているし、皆から見れば不幸極まりない人生なのだが、当の本人は、そんなこと全く気にしていません。

 これといった、クライマックスもなく「毎日」が過ぎて行くのですが、娘との掛け合いが微笑ましく、笑わせてくれるのです。そして、最後は何故か涙が出てくる人もいるようです。超絶、サイコーに、すべてを肯定したくなる物語なのです。


漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)

最後に

 人との違いに気づき始め、コンプレックスを持ち出す思春期。私もその頃にこれらの本と出合えていたら…、と思わされる西加奈子氏。特に20代の方にお勧めです。

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